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かばん関西歌会

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2007年 04月 25日

3月歌会報告

[平成十九年三月かばん関西オンライン歌会]

【参加者】雨宮司、有田里絵、大澤美枝子、笹井宏之(購読・未来)、十谷あとり(日月・玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、山下りん(ゲスト)、棉くみこ

今年二度目のML利用のオンライン歌会。題詠は一見難解かと思われたが、自由な発想の歌が続々と詠まれ、盛況となった。

☆題詠「絵/写真」

だまし絵に騙されあっていましたね でたらめにうつくしかった日々  笹井宏之(4票)

 一部で、つくり過ぎ、との評もあったものの、「だまし絵」と「でたらめ」の二つの語のバランスの絶妙さに好意的な評が集まった。

暗き画廊の床に置かれし幾数の絵を見る人が絵のごと揺れる  棉くみこ(3票)

 
 絵そのものではなく、絵の観客を絵のように捉えた視線に、好意的な評が集まる。一方で、一読では歌を捉えにくいとの意見もあった。

上手に描けたねって褒めたのに何を描いたのってどうして聞くの  大澤美枝子(3票)

 子どもの視線に徹して大人の発言を見透かした点に絶賛が集まる。破調だからいいという意見と、定型に近づけるべきだという意見とに分かれた。

鳥辺野病院真鍮のノブ光れるを絵踏みの板のきりすとの頬  十谷あとり(3票)

 塚本邦雄の贋作ではないか、との評も飛び出した。「きりすと」という表記が江戸時代を連想させ、歌全体の雰囲気を決定している、との評もあった。

レオノール藤田がボルガの朝焼にえがく浚渫船と子犬を  蔦きうい(2票)

 作者によれば、レオノール藤田は実際にはボルガ河には行ったことがなく、愛猫家ではあるが犬を飼っていた記録はないとのこと。虚実皮膜の裡を楽しむ一首となった。

☆自由詠

ぞうさんを指さしながら歌ふればそのたびtempoちがひてたのし  有田里絵(4票)

 子どもの存在感が圧倒的で、楽しげな意見が続出し、自由詠での最高得点歌となった。

掌中で指紋のついた珠のごと内なるひかりを少し曲げゆく  雨宮司(3票)

 珠のようにひかりを曲げる、という比喩にひっかかるものを感じる意見もあったが、人間の成長や、とても深い世界の入り口を感じさせるという意見が目立った。

風まけば鳴る未来から放たれて終わりの音【おと】も始まりの音【ね】も  山下りん(2票)

 全体を読んだ場合に何が始まり何が終わるのか解かりづらい、との意見もあったが、「風まけば」という動詞が効果的だという好意的な評もあった。

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 面白い趣向の歌が多く、うれしい悲鳴をあげながらの選歌となった。より良い歌をという参加者の思いがここぞとばかりに発揮されているのだと思う。 特に自身の歌を評さねばならなくなる場合、歌の評は非常に厳しいものとなる。ただ、それを超えたところに新たな歌境が現出する可能性が確かにある。それに心のどこかで気付いているからこそ、こうして歌会記を書いているのかもしれない。 
 今回は参加していないが、新規会員も入ってきている。初心を忘れず、一歩ずつ自身の表現を高める志をいつまでも持ってほしいと思う。 (雨宮司・記) 

by kaban-west | 2007-04-25 19:08 | 歌会報告


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