「かばん関西6月歌会記」
参加者:天昵聰、雨宮司、有田里絵、石川游(購読)、岩本久美(購読)、笹井宏之(購読/未来)、十谷あとり(日月/玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、 山田航
今月のお題は、十谷さんより「いれもの」。それぞれにお題を取り上げていますが、しんみりとした後味の歌が多かったという点が印象にあります。
☆五月来と外したる繪の残像はまなうらに秘む わたしのモナ・リザ 石川游
漢字「繪」の選択眼。モナ・リザへの作者の思いも感じられる。
☆みかん箱薄日に褪せる縁側で子どもの僕と猫が死んでる 天昵聰
追憶の中の死のイメージに不思議な感覚を味わう。
☆からっぽになれば詠めなくなりそうで泥つきのまま朝を迎える 有田里絵
きれいなだけでは歌を詠めないかもしれないという不安。
☆ぎやまんの鉢にて育つらんちゅうをじいっと覗く仔猫一匹 雨宮司
絵のような光景に、ささやかな幸せを得る仔猫と作者。
☆領収書もリボンも入れる缶々は関西訛りほどにまにあう 岩本久美
実際の行為でなかったとしても共感できる、下句の巧さ。「缶々」もマル。
☆水をかへない花瓶のやうな日日【にちにち】を重ねて紐で十字に括る 十谷あとり
最高得点歌。歌い出しの個性と、結句の潔さが素晴らしい。
☆切れすぎる包丁のかなしみなどをボウルの底へ沈める農婦 笹井宏之
結句「農婦」に評価が集まった。包丁と動作のバランスが作者ならでは。
☆ぬれ縁に吊る金魚鉢あの人のいない薄青【ブルー】をおよぎつづける 蔦きうい
読み進めるに連れて、それぞれのモチーフが叙情性を増していく。
☆いつも同じ作り話ぢや飽きちやふねお気に入りのマグカップも割れて 山田航
二人の関係の捉え方は読み手それぞれ。後日、かなに関する意見交換を
呼んだ。
続いて、自由詠から何首か挙げておきます。
☆雨あとの蛍袋に触れしとき心【うら】を流るるふるさとの川 石川游
☆犬小屋がなくても舌をだしあって犬だったよね 空だったよね 笹井宏之
☆女の子と呼びたくなくなるほど長く見てゐたひとに緑蔭がさす 山田航
☆半ズボンをずらす男よみな転けよ冷やしつけ麺の幟の前で 岩本久美
今月は、笹井さんご参加の歌誌『新彗星』が新聞で紹介されるという嬉しいお知らせもありました。かばん関西のメンバーは、個々でも活躍の場を広げています。これからも楽しみです。歌会係の十谷さん、本当にお疲れさまでした。
(有田里絵/記)