1 2008年 07月 31日
かばん関西七月歌会 歌会記 オンライン歌会【参加者】天昵聰・雨宮司・有田里絵・石川游(購読)・笹井宏之(購読・未来)・十谷あとり(日月・玲瓏)・蔦きうい(玲瓏)・山田航 今月の兼題は不肖わたくし山田の発案によります「兄弟姉妹」。兄弟がいる人いない人八名から、兼題・自由題あわせて三十四首の作品が集まりました。 《兼題の部》 ☆テーブルに羽根を散らしておとうとは確かに鳩の言葉を吐いた 笹井宏之 まさに笹井ワールド。詩性の高さ、美しさを評価する声多し。寺山修司の「おとうとと鳥」を思わせるという意見も。 ☆猫さえも鳴かぬまひるま弟のかのじょとプラムプディングを焼く 蔦きうい 「弟のかのじょ」という微妙な存在。ぎこちないけれど、ほのかに漂う親密感が出ているとの指摘がありました。 ☆おとうとの恋人は花の下に佇つ とほくて こゑの白さうなひとだ 十谷あとり 最高得点歌。「おとうとの恋人」の純粋無垢なイメージが「こゑの白さうなひと」によく託されています。 ひらがなの遣い方も巧みで、やわらかな世界観を見事に演出しています。 ☆妹も弟もよしまた産めるエコー画面の確かな命 有田里絵 母親の立場から兄弟を詠んだ唯一の歌。衒いのない詠みぶりは素直な歓びを感じさせてくれます。 ☆キッチンにはつなつのやみこくこくと真水に震ふいもうとの咽喉 【のど】 山田航 同じく最高得点歌。「こくこくと」が深まっていく闇と真水に震える咽喉の両方にかかっているという技巧を評価する声がある一方で、「はつなつのやみ」という言葉の平坦さへの批判もありました。 ☆蝋燭の灯りにゆれて遠くなる 兄ちゃんどこへいったんだろう 天昵聰 濃厚な死の匂いを漂わせている歌。幼さゆえの素朴な語り口が余計怖いかも? 《自由題の部》 ☆螺旋階段のぼりつめたる忍摺摘み呉るる人夕べに待てり 石川游 忍摺(シノブズリ)とは捩花(ネジバナ)のこと。花の形状と螺旋階段を重ねているわけですが。いまいち比喩が難解との声があがりました。 ☆ドトールが悪いんじゃないドトールの従業員がおそらく悪い 雨宮司 突っ込みどころの多い歌ゆえに、読んでいて楽しくなるとも評され、独特の存在感を醸し出している歌でした。 ☆もろともに滅びてしまえ茜雲 龍の屋敷へさらわれた姉 蔦きうい 詩的飛躍の大きいファンタジックな歌。西洋のドラゴンではなく東洋の龍だろうという指摘が重なったのも興味深い点です。 ☆覚えたてのクロールでゆく日々の瀬にきらめくやうなあやまちはある 山田航 あやまちやしくじりもまた美しい若き日の一瞬を切り取ったところに評価が集まりました。 新しい出発や夏のひかりを感じさせるとの指摘も。 「兄弟姉妹」の歌は作中主体の性別によってもかなり読みが違ってくるとの声がありました。 匿名制だけに、作者を予想するのもひとつの楽しみ? そして本当に歌われた兄弟姉妹がいるのか考えるのも、またひとつの醍醐味でしょうか。ちなみに僕は、実際にいる弟妹しか詠めませんでした。(山田航/記) ■
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by kaban-west
| 2008-07-31 10:49
| 歌会報告
2008年 07月 07日
「かばん関西6月歌会記」 参加者:天昵聰、雨宮司、有田里絵、石川游(購読)、岩本久美(購読)、笹井宏之(購読/未来)、十谷あとり(日月/玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、 山田航 今月のお題は、十谷さんより「いれもの」。それぞれにお題を取り上げていますが、しんみりとした後味の歌が多かったという点が印象にあります。 ☆五月来と外したる繪の残像はまなうらに秘む わたしのモナ・リザ 石川游 漢字「繪」の選択眼。モナ・リザへの作者の思いも感じられる。 ☆みかん箱薄日に褪せる縁側で子どもの僕と猫が死んでる 天昵聰 追憶の中の死のイメージに不思議な感覚を味わう。 ☆からっぽになれば詠めなくなりそうで泥つきのまま朝を迎える 有田里絵 きれいなだけでは歌を詠めないかもしれないという不安。 ☆ぎやまんの鉢にて育つらんちゅうをじいっと覗く仔猫一匹 雨宮司 絵のような光景に、ささやかな幸せを得る仔猫と作者。 ☆領収書もリボンも入れる缶々は関西訛りほどにまにあう 岩本久美 実際の行為でなかったとしても共感できる、下句の巧さ。「缶々」もマル。 ☆水をかへない花瓶のやうな日日【にちにち】を重ねて紐で十字に括る 十谷あとり 最高得点歌。歌い出しの個性と、結句の潔さが素晴らしい。 ☆切れすぎる包丁のかなしみなどをボウルの底へ沈める農婦 笹井宏之 結句「農婦」に評価が集まった。包丁と動作のバランスが作者ならでは。 ☆ぬれ縁に吊る金魚鉢あの人のいない薄青【ブルー】をおよぎつづける 蔦きうい 読み進めるに連れて、それぞれのモチーフが叙情性を増していく。 ☆いつも同じ作り話ぢや飽きちやふねお気に入りのマグカップも割れて 山田航 二人の関係の捉え方は読み手それぞれ。後日、かなに関する意見交換を 呼んだ。 続いて、自由詠から何首か挙げておきます。 ☆雨あとの蛍袋に触れしとき心【うら】を流るるふるさとの川 石川游 ☆犬小屋がなくても舌をだしあって犬だったよね 空だったよね 笹井宏之 ☆女の子と呼びたくなくなるほど長く見てゐたひとに緑蔭がさす 山田航 ☆半ズボンをずらす男よみな転けよ冷やしつけ麺の幟の前で 岩本久美 今月は、笹井さんご参加の歌誌『新彗星』が新聞で紹介されるという嬉しいお知らせもありました。かばん関西のメンバーは、個々でも活躍の場を広げています。これからも楽しみです。歌会係の十谷さん、本当にお疲れさまでした。 (有田里絵/記) ■
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by kaban-west
| 2008-07-07 09:15
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