かばん関西歌会

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2018年 01月 01日

2017年師走歌会記

かばん関西 師走歌会記
             

【とき】二〇一七年十二月三日(日曜日)午後一時から五時まで
【ところ】大阪市西区民センター 三階和室

【参加者】 雨宮司、新井蜜(塔)、有田里絵、泳二(ゲスト)、小川ちとせ、久保茂樹、雀來豆(未來)、十谷あとり(日月)、とみいえひろこ、福島直広
※所属表記なしは「かばん」正会員。

十二月の最初の日曜日、風のない晴れた日、十名が集まりました。会場のあるビルは駅からすぐの場所にあります。隣に建つ古めかしいマンションには、司馬遼太郎さんが一時期住んでいらしたとか。重厚な外観でしたが、十六畳の和室はすりガラスの引き戸がレトロな、ほっとする部屋でした。えび茶色の長机と小梅模様の座布団を並べ、十谷あとりさん司会進行のもと、歌会を行いました。

今回の兼題は「光」です。事前に提出された詠草十首の中から一人三首ずつ選歌しました。以下は詠草一覧の掲載順に紹介しています。二行目は得点と選歌者名です。

幻灯機からきんいろの筒あらはれて掴まうとした指がきつねね  久保茂樹
四点 (新井 有田 とみいえ 福島)

十月入会の久保さんに初めてお会いできました。思い出の美しさや懐かしさを感じるという意見がありました。幻灯機の実物を見たことがない人もいましたが、イメージは伝わっていました。結句の「ね」の重なりのかわいらしさや、ひらがなの使い方に対する評価もありました。


きみの耳はいつもひかりに透けているにっこうぼさつがっこうぼさつ  小川ちとせ
三点 (新井 雀來豆 十谷)

同じく十月入会で初参加の小川さんの歌です。平仮名の多用が効果的であるという評価がありました。「きみ」が具体的に何を指すのかについて、菩薩、赤ちゃん、我が子、気になる女の子などの意見が出ました。下の句は特に意味はなく(実景ではなく)、耳のように「対になるもの」というイメージを付加した呪文のような言葉になっています。いつくしみの対象を柔らかく捉えています。


その地には地獄の業火が拡がったひかりまばゆく炸けた刹那    雨宮司
無点

作者は「その地」がどこを指すのかと指摘されることは想定済みだったかもしれない、と前置きした上で、現在も世界各地で戦争が起きていると言おうとしているのではないかという読みが出ました。言葉は強いが作者は歌の対象物から遠く離れたところにいるように思える、大きすぎるものを読むのは難しいという意見もありました。


光あれと夜の向こうへ飛んでゆく空中ブランコ乗りの兄弟     雀來豆
四点 (泳二 小川 十谷 とみいえ)

サーカスはそれだけでファンタジーであり、舞台の華やかさと同時に常に物悲しさがある、という声に参加者はみなうなずいていました。この兄弟はどんな事情でサーカスにいるのでしょう。テントの中で披露される空中ブランコは、実際に夜の向こうへ飛んでゆくことはできません。それでも今夜も飛び続ける兄弟に、いつか観客の方が置いていかれるのかもしれない、という声もありました。歌の世界観に参加者みんなで触れるという歌会の良さを感じさせてくれた歌です。


三つ星は雄弁なりき落葉のこどものやうに眠る真上に      有田里絵
二点 (雨宮 雀來豆)

三句目以下の歌意が捉えにくいので、語順を整理するほうがよいという指摘がありました。「落葉の」の「の」は主格を表していますが伝わりにくかったようです。作者は「雄弁なりき」の「き」を、過去と継続の両方を表すつもりで使っていました。実景を描写しているとはいえごちゃごちゃしてしまい、不慣れな旧かなづかいはやはりこなれておらず、再考いたします。


飲み干して人は旅人ドトールのカップに光浴びせるままに  とみいえひろこ
一点 (泳二)

まず「しゅっとしてる歌やなあ」という関西風味満載の声に、笑いが起こりました。結句の「浴びせるままに」について疑問や意見が集中しました。文法上は使役に見えるが作者の意図はそれで正しいのだろうか、飲み干すとカップの底が光る、飲んでいる人が席を離れるとカップに照明が当たって光る、などの読みが出ました。「人は旅人」の「人」について、作者はドトールに行ったのかもしれないが歌の中では万人を指すのではないかという意見もありました。


星明り頼りてすすむ畑中のほそき畦道生家目指して        新井蜜
二点 (久保 福島)

地方にある生家に久しぶりに帰る気持ちが伝わる歌です。新井さんは栃木県生まれでいらっしゃるとのこと。星は頭上に輝いているけれど、それ以上に、生家を目指す主体の心こそが輝く光ではないか、という意見がすばらしかったです。実家ではなく「生家」にした効果を実感します。上の句に比べて下の句は助詞が少なく、詰まった感じがするという意見もありました。


裏路地に咲く赤い灯に誘われてコの字に集うダークダックス   福島直広
二点 (雨宮 小川)

この「赤い灯」は街頭で、ダークダックスがスタンドマイクのように囲んで歌っている心象風景ではないかという読みが出ました。これは現実で、赤提灯を掲げた狭い店で飲んでいるという読みも出ました。お客が立ち飲みで過ごすスタイルのことを、実際にダークダックスと称することもあるようです。
また、体言止めについて、固有名詞に寄りすぎているより(「効果としては三角」というコメントに一同大笑い)、サーカスの歌の「兄弟」のように広がりがあるほうが良いのではないか、という意見がありました。


教室のぜんぶの窓が金色に光る角度でとどまる夕日 泳二         
七点 (雨宮 新井 有田 小川 久保 十谷 福島)

情景の伝わりやすさと、「ぜんぶ」「とどまる」の平仮名に高評価が集まりました。きれいです。「とどまれ」としても良かったのではという意見があり、泳二さんもああそれがあったか!と反応されていました。この歌の場面に出会えるのはとても短い時間ですから、作中主体がより長く見ていたいという気持ちになるのは自然でしょうね。写真撮影の用語にある「マジックアワー」を思い出しました。

はつふゆの雨滴はわらふ〈くすのきビル〉エントランスの甃の面に 十谷あとり
五点 (有田 泳二 久保 雀來豆 とみいえ)

 漢字「甃」は、この歌では「いし」と読ませていますが一般的には「しきいし」と読み、仏閣などの敷石を指します。「わらふ」について、作者の心情が反映された擬人であるという意見や、兼題「光」をふまえて笑うことは光ることであるとして表現されているという意見もありました。パーレンがあることでこのビルがより高いビルに感じられる、字余りだが「くすのき」が良いので気にならないという評価もありました。

 通常の歌会の後は、今年気になった歌を発表したり、作歌の具体的方法について話したりしました。座布団を勝手に増やして座り、とても和やかな時間を過ごすことができました。

 歌会終了後はなにわ筋辺りへ移動し、福島さんプレゼンツの忘年会を行いました。お店から出てきたとき、向かいのビルの上に見事なスーパームーンが見えました。今年の歌会はマル!と言ってもらえたようで、とてもうれしくなりました。これからもみなさんと短歌を語る機会を持ち続けたいです。
                           (有田里絵、記)


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by kaban-west | 2018-01-01 15:06 | 歌会報告