かばん関西歌会

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2018年 02月 01日

2018年1月歌会記

かばん関西 一月オンライン歌会記
             

■参加者一覧(敬称略)
雨宮司、新井蜜(塔)、有田里絵、泳二(ゲスト)、戎居莉恵、小川ちとせ、漕戸もり、佐藤元紀、雀來豆(未來)、杉田抱僕(ゲスト)、とみいえひろこ、蔦きうい(玲瓏)、ふらみらり、本田葵 
※注記の無い方はかばん正会員 計十四名

 今回進行役のとみいえひろこ氏から出されたテーマは「百合短歌」あるいは「嘘」の選択でした。初めて挑む人も多かったのではと思われる百合短歌、また、何が嘘で何が本当なのかの線引きが興味深い「嘘」短歌を紹介します。

◆◆百合短歌 片思い◆◆
ひそやかなわたしの想い告げたときアンナの瞳はかすかにゆれた  新井蜜
ユイはなぜアイと行ったの友チョコに黒いハートを練りこんでいる  有田里絵
あこがれと謂われてしまえばそうだろう恋は一色ではないけれど  ふらみらり
あの日々をあなたと思う おそろいのセーラー服を桜と思う  杉田抱僕
恋人のように握ったてのひらの冷たさここは冬の真ん中  泳二
ぼくはきみにきみは彼女にさ よならと 手を振っている三叉路の春  雀來豆

 一首目。瞳が揺れたことから逡巡したことが伺われます。隠微でエロティシズムを感じる歌。愛する人の動きには敏感になるし、そこから過剰に意味を読み取ろうとしますよね。客観視すれば病的なほどに。二首目。「友チョコ」という言葉からローティーンの女の子を思い浮かべました。まだ幼くて、恋愛の疑似体験を同性の友達に感じているような。一番仲のいい友達に対して、少し恋愛感情が入っていて、相手が他の子と仲良くしていただけで嫉妬してしまう。女子のみなさん、覚えありませんか。三首目。自注ですが、同性に片思いだけど、「ただのあこがれじゃないの?」と言われたと考えた歌です。憧れる気持ちもあるけど、それは異性愛でも同じこと。恋する 気持ちは嫉妬も憎しみも純粋な愛情も尊敬する気持ちもぐつぐつ煮詰めてどろどろになったものだと思うので、「あこがれ」一言ですむわけがないということです。四首目。好きな人とおそろいの制服を着ていられたのは期間限定の学生時代だけれども、その閉じられた時間と空間だからこそ、彼女一色になったのでしょう。桜のように今は散ってしまったことを伺わせますが、いつかそのときが来ると当時から悟っていたのか、ただ美しさに酔っていたのか。振り返っても自分のことさえもよくわからないことがあります。五首目。寒さの中で恋人を夢見て手を握ると、ひんやりと冷たく、その冷たさが愛おしく感じるけど、まるで、彼女の心の中を見たようなとまどいがあります。「冬の真ん中」とは底が見えな いような深いかなしみを感じます。六首目。三叉路に三人の人間関係を象徴させています。それぞれに進む方向が違っていて、手を振っても目が合うことがないもどかしさ。無力感が伝わりますが、早春をイメージさせ、じめっとしていなくて乾いた寂しさ。これからの物語がそれぞれにあるんだろうなあと、若さを感じます。

◆◆百合短歌 ふたりでいるとき◆◆
冷え切ってゆびさきまで悲しみ抜いてこれは君から伝染った生理  とみいえひろこ
みだれがみ梳きあう朝は好悪とかどうでもいいの。罵詈をにれかむ  蔦きうい
私よりまるいかたちに誘われてそっとホックをはずす花咲く  戎居莉恵
重なればこわれる落葉M-1をかさこそ笑いあって観る夜  漕戸もり

 一首目。冷たいゆびさき がとてもつらいですね。ふたりでいるからこそ、自分たちの状況が心に刺さってくるようです。お互いに生理があることの哀しみでしょうか。その哀しみを共有している心情を感じました。二首目。「にれかむ」とは反芻するという意味。「みだれがみ」とは、夜の出来事の証でしょうか。その髪をお互いにととのえあう朝とはなんともけだるげで甘い時間。そして憎しみや罵倒もにれかんだうえで育つのでしょう。表現力に賛同の声が多かった歌。三首目。「私より丸いかたち」ということは自分より胸が大きいということでしょうか。確かに、女性でも大きな胸に触ってみたいという欲求はあり、それが愛する人ならなおさらでしょう。下着をとったときのぱっと花開く感じも、複数の読み手が言及しました。直 前のどきどき感が伝わります。百合短歌らしい、やわらかく、なまめかしい歌。四首目。上句や「かさこそ」という表現から、もろくはかない関係性を感じます。照明を落とした部屋で、テレビの光だけで二人並んでくすくすわらっているような。Mー1という、にぎやかで躍動的な番組を出すことで、二人の秘められた関係が強調されています。

◆◆ 嘘 小さな嘘でも心はざわつく◆◆
「大嫌い」娘がついた初めての嘘がこれです四月一日  本田葵
冬の蝶みたいなうそをつく人だポカリスエットぼんやり白い  小川ちとせ
掛軸にかするる墨のふとぶとと俺を縛れるその一文字  佐藤元紀
吉野川特産鮎の串焼を 嘘こけ今は禁漁期だろ  雨宮司

一首目。四月一日だから嘘と思いたい親心で しょうか。もしかしたらこれは虚構で四月一日ではないかもしれない。エイプリルフールなんて関係なくて、子どもさんの本音かもしれない。何が本当で何が嘘か虚構かもしれない短歌の世界。でも、短歌を詠んだ時点でどこかに必ず嘘が混じりますよね。二首目。冬の蝶とはいかにも弱々しく、すぐに死んでしまいそうな嘘なのでしょうか。そもそも冬に蝶っているんでしょうか。と考えると比喩がすばらしい。ポカリスエットの白さの「ぼんやり」も紗がかかっていて、現実から離れている世界のようです。三首目。兼題から、その掛け軸には「嘘」と書かれているのだろうと推測しますが、「かするる」と「ふとぶとと」は相反する状態だと思いますが、そのかすれた文字が太い縄となって縛るのでしょうか。 嘘という言葉に縛られているのだとしたら、何を信じていいのかわからない。四首目。真冬に新茶ですと出されたような心境でしょうか。料理を前にして思わず出たつぶやきをそのまま歌にしたような臨場感があります。「嘘こけ」という俗語がテンポある歌にしています。
最後に自由詠から高得点の歌を紹介します。

私だけ常識はずれサーモンが鮭だと知った日もそうだった  有田里絵
失ったはずの鰓が動きだすまふゆまよなかバスタブの底  小川ちとせ
新聞にくるまれていて性別がわからないほど小さな夜明け  雀來豆
ペンギンも恐竜も鳥 僕たちは魚を焼いて食べるのが好き  杉田抱僕
                           (ふらみらり/記)


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by kaban-west | 2018-02-01 15:12 | 歌会報告