かばん関西歌会

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2006年 10月 30日

10月歌会報告

*かばん関西歌会 二〇〇六年十月 オンライン歌会*

【参加者】雨宮司、有田里絵、大澤美枝子、笹井宏之(購読)、塩谷風月、十谷あとり(日月・玲瓏)、山下りん(ゲスト)、棉くみこ

MLを利用したオンライン歌会。題詠は仲秋の名月にちなんで「月」。得票はばらついて、二点、三点歌が多い結果となりました。

☆題詠「月」

セーターのえりぐり丸く満たしつつうなじの坂は月色を帯ぶ  十谷あとり

欠けているぶぶんの月が廃校の棚に入っているのは秘密 笹井宏之

記念日は立ち待ち月よ白ワイン倒してけんかした日もあった  大澤美枝子

見えぬまま頬を両手で包みたり新月の夜に交わすくちづけ  塩谷風月

群雲の月の光は冴え渡るいよよ華やぐ盗賊の歌   雨宮司

 一首目、首筋の美しさが際立つ、艶のある歌。なんでもないことをすこしだけ異化させた歌い方で、読み手を楽しませる。
二首目、「廃校」と「秘密」が響きあっている。「欠けているぶぶん」に着目し
たところにひかれた、との意見も。
三首目、下句が痛快!「立ち待ち」と「忽ち」が掛けられていて巧い(通常は「立待月」と表記するそう)。
四首目、ロマンチックなシチュエーションが好評。敢えて「くちづけ」と言わな
ければもっと素敵かも、「新月の夜」がなくてもいいかも、と期待感ある注文が多かった。
五首目、盗賊より山賊のイメージ。月夜に、豪快に酒宴をひらく様子が浮かぶ。三句目は「冴え渡り」のほうが流れがいいのでは、との指摘について、作者より「最後まで悩んだが、力強さがあり気に入っている」とのこと。

☆自由詠

ため息がいま飲み干した珈琲の缶に溜まってゆく夜明けまえ 笹井宏之

一歩ずつリセットしよう顔上げて白だけを踏む横断歩道  有田里絵

種火守る小さき種火守るためくべても構わぬ約束の指  山下りん

湧き立つように女子高生ら乗りこみて車両ひと時花束となる 塩谷風月

 一首目、ぴたっとまとまった表現の冴えで、三点歌に。
二首目、「リセットしよう」の元気よさが売り。共感した人が多かった。
三首目、指をくべてもいい、という決心の固さに迫力が宿る。「種火守る小さき種火守る」の反復は、あまり有効でない、呪文のようで効果あり、とに分かれた。
四首目、(実際の女子高生はうるさいで~)とは思うものの、それが疵にはなっていない。「湧き立つように」の比喩が効いていて、明るく受け入れやすい歌となった。

☆解釈されなかった歌おしまいに試みに、「わからない」と言われた歌を提示してみます。

側溝に映る光のつめたさよ『月映【つくはえ】』の文字の右から左  棉くみこ

火星には二つの月があるらしい私も四つの月を持つけど  大澤美枝子

一首目、上句はわかるが、『月映』って何?作者意図は、『月映』という雑誌があり、題字が右から左へ書かれていた違和感を書きたかった。
二首目、「四つの月」について、お一人を除き、肘などの漢字を想像した人が多かった。作者によれば、お子さんとのこと。言われてみれば、たしかに惑星のようで、それが読み手に伝われば楽しい歌になったのではと思う。

*「わからない」と言われることは、改作のヒントである! と常々思っていま
す。その点でも、歌会ってアリガタイです。(棉くみこ記)
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# by kaban-west | 2006-10-30 11:32 | 歌会報告
2006年 09月 23日

2006年9月歌会

かばん関西九月歌会 歌会記

九月二十三日、奈良県文化会館にて、かばん関西九月歌会が催されました。参加者(敬称略)は、有田里絵、雨宮司、笹井宏之(購読会員/オンライン参加)、山下りん(ゲスト/オンライン参加)、棉くみこ、十谷あとり(日月・玲瓏)の六名。兼題自由題に三十二首、歌会当日の吟行詠二十六首、合計五十八首の作品が集まり、もりだくさんの歌会となりました。作品の一部をご紹介しながら、当日の模様を報告いたします。

       *

《兼題の部》  今回の兼題は「庭・ベランダ」。

・ほしのふるおとを録音しました、と庭師がもってくるフロッピー  笹井宏之

・借景の庭この秋は大輪の菊の咲くらし支柱の増えて    山下りん

・引っ越しをするたび増える俺の庭またふるさとは少し遠のく  有田里絵            

・あさがおの咲き残る庭あかるくて9月の空に並べたいもの  棉くみこ

 一首目、上質なファンタジーの世界。二首目、庭を丁寧に観察しているところがよい。三首目、「俺の庭」がハンサムな表現。四首目、「並べたい」すてきなものが歌の外にひろがっているように感じられる。

《自由詠の部》

・読みさしの本に真夏を挟み込み書棚のすこし奥にしまった  笹井宏之

・白い棚捨てて目覚めてゆく身体必然として空よりも晴れ   有田里絵

・イタリアンパセリを噛んだ不意打ちをこぼせる人なく広がる独り  山下りん

一首目、夏の終わりを感じさせる。二首目、行動から身体感覚への飛躍が面白い。三首目、「イタリアンパセリ」という素材が効果的。

《吟行の部》  歌会に先立ち、会場近くの世界遺産「元興寺」とその周辺を散策し、吟行を行った。

・何もないところ何度も指さして子は我よりも上を見ている  有田里絵

・緑濃き池に波紋が小【ち】さく立つ亀から逃げたいメダカであるか   雨宮司

・采女まつりの案内板に描かれたる月二つあり空と水面に   棉くみこ

・萩の株は凍結したる噴水だ赤・白・緑にかすかにしだれ   雨宮司

・教わらず今日咲いている彼岸花その確かさを君と見ており  有田里絵

・かみさまの折る折り紙にあやまちの折り目はあらずききやうむらさき  十谷あとり

・蜻蛉舞う下町の寺の真昼間はただ抹香の香ぞ漂える     雨宮司

 元興寺では、萩はまだ見ごろを迎えていなかったものの、桔梗や紅白の彼岸花が、石塔石仏に寄り添うように咲いているところを鑑賞することができた。

       *

忙しさに流されがちな日常生活の中に、「歌会」という「短歌について話し合える場」を持てることが、どれほどうれしいことか、再認識した一日でした。「歌会ってどんなことするの?」と思われる方、オンラインでも、オフラインでも参加できますので、ぜひどうぞ覗きにいらして下さい。(十谷あとり)
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# by kaban-west | 2006-09-23 15:46 | 歌会報告
2006年 08月 30日

8月歌会報告

[かばん関西歌会 二〇〇六年八月 オンライン歌会]

【参加者】雨宮司、有田里絵、笹井宏之(購読)、十谷あとり
(日月・玲瓏、司会進行)、山下りん(ゲスト)、棉くみこ

八月の歌会はMLを利用したオンライン歌会。
題詠は夏にちなんで「動物園/水族館」。皆さんそれぞれ思い入れがあるようで、印象深い歌が多かった。

☆題詠「動物園/水族館」より

・最前列でイルカのショーをよう見やんぼくの弱気を「好きや」と言うな  十谷あとり(4票)

 関西弁で詠まれた微妙に屈折した心理に好感を覚える評が集まる。一方で、関西弁を抑え気味にした方がいいとの意見もあった。

・やわらかにひらいてむすぶ手を取りて餌を食むラクダの足に近づく  棉くみこ(3票)

・もう一度キリンがいいと言ったのは見上げる君を見ていないから  有田里絵(3票)

・ヤマアラシにもアルマジロにもなる自らを飼い慣らしゆく檻の増えつつ  山下りん(2票)

・頼むからブルーライトはよしてくれ虹色のクラゲを観たいんだ俺は  雨宮司 (2票)

・閉園後、動物慰霊碑のまえで食費を握る老飼育員  笹井宏之(1票)

 一首目、動詞の多さを指摘する声もあったが、恋人や子供と一緒にラクダを観ているとする好意的な意見が多かった。
二首目、素直な詠みぶりに全員好感を持つ。作者によれば、自身の背が高いので、上を見ている人が気になるとのこと。
三首目、ヤマアラシとアルマジロとの対比を面白がる者と、どちらも防御という面では同じだという者に意見が分かれる。作者によれば攻撃的防御と守備的防御ぐらいに考えていたとのこと。
四首目、進歩するテクノロジーと人の夢の象徴と捉える意見もあったが、作者によれば実景から生じた感情を詠んだとのこと。
五首目、一連として読みたい、また、悲しみや憤りを感じるとの意見があった。作者は、戦時中に餓死させられた象の話を詠んだという。しばし黙祷。

☆自由詠より

・コーヒーにあたためられた喉からの声で隣の人があたたまる  笹井宏之(4票)

 季節外れではあるが、密接な関係の人ではなく隣人にあたたかみが伝わる、という点に好感を得た意見が集まった。反復も必然的で、技術的にもしっかりしている。

・(じじ)蝉が(じじ)死にきれず転がって(じじ)足元でばたついて(じじ)  雨宮司 (3票)

・一面の向日葵畑に拾われて笑顔100本ノックしてみる 山下りん(2票)

・走る吾の視界にせり出す時計屋の時計があらぬ時間を示す  棉くみこ(2票)

・残らんもんはみんなきれいね砂浜のあしあとにできる薄い影とか  十谷あとり(2票)

・ざらついた踝ばかり見てしまう心弱い日描く白船  有田里絵(1票)

 一首目、(じじ)の位置や表記に好意的な評が集まる。作者はノイズ感覚を入れてみたかったとのこと。
二首目、底抜けの明るさに惹かれるという意見がある一方、向日葵と笑顔と一〇〇本ノックとのつながりがはっきりせずにグロテスクさを覚えるという意見もあった。作者は向日葵に負けない笑顔を生みだしたかったと語る。
三首目、急いでいる時に景色の一部が視界に飛びこんでくる感覚が上手く捉えられているという、説得力のある評が出される。一方で、「あらぬ時間」とはいかなる時間かという質問も出された。
四首目、関西弁で徹底してほしいという要望が出される一方、「砂浜のあしあとにできる薄い影」も見逃さない観察眼への評価が集まる。
五首目、上句と下句で意味が重複しているという意見が相次ぐ中、工夫をすればいい歌になるという意見も出る。作者によれば川崎洋氏の詩が念頭にあったという。

 詳細は未定だが、9月は奈良市内での吟行を予定している。オンライン歌会とはまた違った緊張感の中、限られた時間の中で歌を詠む体験は、自分の力量を知る上でもいいものだと思う。  (雨宮司 記)
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# by kaban-west | 2006-08-30 11:16 | 歌会報告
2006年 07月 31日

7月歌会報告

*かばん関西歌会 二〇〇六年 七月三十日(日)*
於:大阪市立難波市民学習センター

【当日参加者】 雨宮司、有田里絵、十谷あとり(日月/玲瓏)、日向寺みづほ(購読)、鷲家正晃(ゲスト)、棉くみこ
※オンライン参加/笹井宏之(購読)、やや(ゲスト)、山下りん(ゲスト)

★題は、この季節にぴったりの「南国またはトロピカル」。
歌に読み込まなくてもOK。得票の多かったものをご紹介します

・日常に混ざるマンゴー、タピオカの類知らずに父逝きし夏  日向寺みづほ

・沖縄のおばあさんには太陽がいくつもいくつも入れられている  笹井宏之

・カメハメハ大王さまの砂浜に「もういいよ」って置いてきた嘘  やや

・とりあえずマンゴープリン食べてから考えたって間に合う話  有田里絵

・オウム一羽ブラウスに飼いおおらかに笑う人いて部屋の明るむ  棉くみこ 
一首目、初句の入り方がよい。題を生かしつつ、故人の真面目なお人柄を的確に伝えている。
二首目、「沖縄のおばあさん」が味わい深く表現されていて、豪傑笑いが聞こえてきてきそう。「おばあさん」を方言で表してもよかった。選をしなかった方はみなさん「入れられている」の受け身が気になるとのこと。
三首目、「カメハメハ大王さまの砂浜」と「置いてきた嘘」の組み合わせが絶妙で、さまざまなストーリーを組み立てられそうと一番の話題に。ただ、「もういいよ」の解釈が曖昧との指摘があった。
四首目、作者コメント「2分でできた、申し訳ありません」とあるが、そのスピード感が効果を生み、猛暑に一息つける歌に。
五首目、初句からブラウスの南国風の柄を想像した。下句がありきたりでもったいない。

終了直前、約一分の日向寺さんのサプライズ誕生会を開催(あとりさんのピアニカ伴奏付き)。ちょっとおもしろ関西歌会、みなさんもお気軽にいらしてください。(棉くみこ記)
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# by kaban-west | 2006-07-31 11:11 | 歌会報告
2006年 06月 30日

6月歌会報告

かばん関西2006年6月歌会 報告記

【参加者】雨宮司、有田里絵(司会進行)、笹井宏之(講読)、十谷あとり(玲瓏・日月)、日向寺みづほ(講読)、やや(ゲスト)、鷲家正晃(ゲスト)、棉くみこ

 6月の歌会はMLを利用したオンライン歌会を開きました。題詠はサッカーW杯にちなんだ兼題「足または脚」が19首、自由詠は14首の詠草が出揃い、選歌に苦戦した人も。最高得点は、題詠・自由詠共に5点でした。

■題詠「足または脚」より

(5点歌)
去年から積みっぱなしの三脚を思い出させてくれた夕立  有田里絵

こころにも手や足がありねむるまえしずかに屈伸運動をする  笹井宏之

 一首目、夕立で何かを思い出すのではなく、夕立が何かを思い出させてくれるという語句の転換がおもしろい。「夕立」がこの季節にぴったりの歌。二首目、柔軟で伸びやかなこころ、素直なこころを感じる。ひらがなの使い方が良い。「こころの屈伸運動」という捉え方も新鮮。
 他の注目歌も見てみましょう。行末の(数字)は獲得票です。

あかときの壁わたりゆくピアニシモ蜘蛛よその脚をひらきつくせよ   十谷あとり(3)

ひとあしまたひとあし水を踏む鷺の脚見つむれば瞳は濡れ来   十谷あとり(2)
スタートの乾く一声待ちかねて足という足われもと駆ける   雨宮司(2)

素足率向かいの席は五分の三明日はウエッジソールにしよう   有田里絵(3)

山鳩の声途絶えたる真昼間の汝が足音にも籠もりたる熱   日向寺みづほ(3)

仰向けばもうもどれないだんご虫ゆうやけ色に足さき染めて   やや(1)

両腕を縛るよううに抱き締めて爪先と顎でキスをあげるよ   鷲家正晃(0)

ワインカラーのパンストが重い足のままいるほかはなく 会議室  晴れ  棉くみこ(1)

 十谷作品は今回も人気。一首目は一語も無駄な語彙がなく、「ピアニシモ」から広がる連想も美しい歌。二首目については、歌のリズムが情景と合っているかどうか賛否両論となった。雨宮作品、的確な表現で情景がすぐに浮かぶ。有田作品は「素足率」の表現が面白く、また今年の流行を取り入れた明るい歌。日向寺作品からはこの時期の暑さが伝わってくる。鷲家作品、「ようう」は単純な間違い? と思った人が多く、無点に終わる。棉作品、独特の表現を解釈しかねた人もいたが、どうしようもないけだるさを感じませんか?

■自由詠より

(5点歌)
ひだまりにひらくてのひらくるぶしをくすぐる風は恋人に似て   日向寺みづほ

 ひらがな表記や同じ音の繰り返しが効果的な歌。「ひらひら」「くるくる」といったオノマトペも隠されている? 「くるぶし」が初々しく、また夏に向かう感じも出ている。

ザルカウィ殺害の報に拍手するテロに歓喜を非難せし民   雨宮司(0)

式典で起立せぬ人サッカーの君が代ならば自然に歌う   有田里絵(2)

ああそれが答えであった 水田に映るまったいらな空の青   笹井宏之(3)

生きてゆく 返しきれないたくさんの恩をかばんにつめて きちんと
   笹井宏之(2)

五月闇こそいのちはぐくむ闇ならめ土に樹木の種はあまねし   十谷あとり(2)

持ち物に名前書くようにカレンダー彼と私の誕生日書く   鷲家正晃(1)

放射状に夏のひかりを散らしては蜘蛛の巣揺れる深き側溝   棉くみこ(2)

101匹分の1匹わんちゃんが主を引っ張り駆けてくる初夏   棉くみこ(1)

 雨宮作品、出だしのリズムの乱れや後半のもたつきが読みづらいとの意見が多かったが、それでも詠まずにはいられなかった作者の感情が伝わってくる。有田作品は諷刺の歌の解釈が複数名から。しかし「no music,no life」の作者曰く素直な連帯感を詠みたかったとのこと。笹井作品、1首目はやや自己陶酔の感もあるが、歌い出しや水田に青空を見つける詩情が評価された。2首目を選ばなかった参加者からは具体性のなさを指摘する声が。十谷作品は宇宙のはじまりさえ想起させる神秘的な印象。鷲家作品、助詞に工夫をとの指摘もあったが、二人の関係の確かさが感じられる歌。棉作品、1首目の情景を切り取ってくる視点が評価された。2首目の上句はなかなかユニーク。

 関西歌会はかばん関西ML参加者なら誰でも参加できるオープンな歌会です。特にオンライン歌会は参加者の居住地や都合に関係なく開くことができ、歌会という場が毎月成立することに感謝感謝のこの頃です。興味を持たれた方は是非お問い合わせください。(日向寺 記)
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# by kaban-west | 2006-06-30 11:34 | 歌会報告