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かばん関西歌会

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2008年 03月 28日

NHK短歌 TV&雑誌

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■天昵 聰

2007年10月28日放送(テレビ) 入選 川野里子選「唐辛子」
2008年1月号(雑誌) 佳作 高野公彦選「肉」
2008年4月号(雑誌) 佳作 川野里子選「編む」


■雨宮 司

2005年12月号(同年10月分)佳作・佐佐木幸綱選
2006年1月号(2005年11月分)佳作・佐佐木幸綱選
2006年4月号(同年2月分)佳作・河野裕子選
2006年9月号(同年7月分)佳作・佐佐木幸綱選
2006年10月号(同年8月分)佳作・佐佐木幸綱選
2007年1月号(2006年11月分)佳作・佐佐木幸綱選
2007年2月号(2006年12月分)佳作・佐佐木幸綱選
2007年3月号(同年1月分)佳作・佐佐木幸綱選、山埜井喜美枝選
2007年5月号(同年3月分)佳作・河野裕子選
2007年6月号(同年4月分)佳作・辺見じゅん選
2007年9月号(同年7月分)入選・栗木京子選
2008年3月号(同年1月分)佳作・川野里子選
2008年5月号(同年3月分)入選・川野里子選


# by kaban-west | 2008-03-28 08:58 | こんなところに出ました
2008年 03月 05日

2月歌会報告

◆◇◆かばん関西2月歌会記◆◇◆

【参加者】天昵 聰、雨宮司、有田里絵、石川游、笹井宏之(購読・未来)、十谷あとり(日月・玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、山下りん (ゲスト)、山田航、棉くみこ

こんにちは。私は、春です。今回は十谷さんが私を兼題に選んでくれはりました。歌の最初の一文字が「は」、終わりの一文字が「る」の歌を詠んで下さい、と。嬉しくて思わず出てきてしまいました。どうぞよろしゅうお付き合いのほどを。

【兼題の部】
☆花かんざしいっせいに向くその先の日溜まりにありもうすぐの春  山下りん 

そう、日溜まりは私の源なのです。花たちはすぐに見つけてくれます。

☆はるかむかし下駄ばきの足が石を蹴り缶蹴りしこと まだ覚えてる   石川游

一昔前はよく見ました。懐かしいです。もうすぐ素足で歩けるようになりますよ。

☆剥落を飾りとなして西壁に「塩」一文字の看板は旧る  十谷あとり 

紺地に白い塩の文字の看板。剥落、西壁とくれば、立ち戻らずにはいられません。

☆灰色の猫の眠りの香箱を満たさむとしてひかりは降【くだ】る  十谷あとり

うずくまる猫を撫でるとなんとも気持ちいいのです。ついうとうとしてこんな夢を見ました。

☆はらはらとたまねぎの皮剥きゆきて透明になる私を夢見る  山下りん 

私も思いますわ、本当は私ってどんな姿をしてんのやろ?って。たまねぎは教えてくれへんのに。

☆ハンガリーシチューを煮込む昼中に名指しの勧誘電話が混じる  棉くみこ

それで、昼間から煮込んでしまいました。名指しの勧誘電話、私も一度かけてもらいたいものです。

☆はんぺんに汁染み込まず 膨れゆく揚げボールばかり選びいる夜   天昵 聰

夜はあったかい和食が食べたくなりましたが、うまくいかず。でもそういう日もあるのです。

☆浜名湖で夜のお菓子を買ってきてちょっと照れつつ近所にくばる   天昵 聰

ちなみにうなぎパイVSOPは「真夜中のお菓子」ですよ。
ああ、みんな美味しそうやわ。私の口は食べられないのです。でも時々こうしてお話するだけで充分。

☆はりつけのレシートの束を見ていたら「費用」と貴方は教えてくれる   山田航 

穂村弘氏の歌の本歌取り。私の他にも、いい人がいてはりますのね。

☆母は母どんなにひっくり返してもはははははははまだ生きている  雨宮司

仙波龍英氏の歌の本歌取り。どんなときも母は強いものです。だから新たな命が生まれます。

*******

番外編になりますがこんな歌もありましたので。

ハンニバル将軍からの手紙にはボクは出撃せぬとあり 冬  蔦きうい

ゆっくりとまぶたの奥の雨雲が北へ流れて春がはじまる  笹井宏之 

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いろいろ詠って下さって、私はとても満足です。おおきに。最後に自由詠から何首かご紹介しておきます。では、ごきげんよう。いつもみなさまの隣、春より。

【自由詠の部】

☆破壊的にこころのきよいひとたちと霞ヶ関のかすみを食べる  笹井宏之

☆チョコレートあげるだけではなくなりて家族で開くメリーひとはこ   有田里絵

☆フン人が去ってこのかた鳴り止まぬ午後の診察室の目覚まし  蔦きうい

☆白き夕に春のきざしのすべりくるいしだあゆみとなりて人恋う  棉くみこ

☆逆光とともに見上げた自転車のハンドルなんかイカロスみたい  山田航

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かばん関西ブログでは、オフライン歌会当日の吟行詠草一覧も読めますので、ぜひどうぞ。皆様ありがとうございました。(有田里絵・記)

# by kaban-west | 2008-03-05 11:31 | 歌会報告
2008年 02月 23日

2月歌会 吟行詠草

――2008年2月23日 奈良駅近辺にて吟行。美術展、商店街、奈良公園などを題材に詠む。

   雨宮司  十五首

梅が枝(え)が口紅色にふくらんで春一番を待ち望んでる

ゆっくりと旅を楽しみたい時に接続もよく急行が来る

通り雨 アーケード街を巨大なる鯨の腹となして去りゆく

金文と行書と篆書を並べ書く文字サンプルと言わしめたいか

縦横にノイズのような条(すじ)を入れEXILEとぞ薄墨で書く

氷結す水惑星の表情を画は眼前に突きつけてくる

高き路地から海を向く風景画いつしか白く波打っている

ざかざかと白く潮吹く石垣を描いた者は「海風」と名付く

三十八、三十九と自らの歩数を述べながら子ども行く

「鹿男あをによし」というドラマなど飛火野にいる鹿は知らない

メモ帳を取り出さなくてよかったと鹿に追われる男を見遣る

松が枝(え)が突風に折れ道路上に一メートルの姿をさらす

阿修羅像は現在修復中らしいだから国宝館には行かない

「鹿煎餅そんなに旨いか」とう声を飛火野辺りで聞いた気がした

風強く時にみぞれが降る中をネタはないかと歩く身の性(さが)

   
   十谷あとり  十三首

城址(しろあと)のなだりに咲ける水仙の白と呼ばむにつめたきひかり
                                       大和郡山城址

くたびれたモリゾーのごとく安らかに水菜は新聞紙(しんぶんがみ)に包まれ

吹き来ればその北風に松の木はことのはのごとき針をし降らす

馬を御す巫女に唐傘さしかけて従ふ男趾(あしゆび)ふとし
                                春日若宮御祭絵巻

鹿の意匠あまた飾れるアーケードものを買わざる歩み愉しも

風呂敷を巻いて従弟の飛び降りし柿の木ありき府中の家に
                                備後府中の記憶

トラックに湯気をたてゐる瀝青に降(くだ)りて春の雨雪は消ゆ

圧輪に延(の)しならさるるアスファルト春風の底を黒く灼きつつ

大いなるソフトクリームの張りぼてにちかづき触るるをさなごの指

定食屋おかるの横の路地を出で耳のうしろを掻く猫のあり

のどやかに人らゆきかふ三条通ソニック・ザ・ヘッジホッグの着ぐるみは歩む

古書店に飼はるる猫のときとして足音もなく本を踏み越ゆ

あんぽ柿きんかんぽんかんそれぞれのころがりやすさもちてひしめく


# by kaban-west | 2008-02-23 22:34 | 歌会報告
2008年 02月 05日

1月歌会報告

◆◆◆ かばん関西1月歌会記 ◆◆◆

【参加者】天昵 聰、雨宮司、有田里絵、笹井宏之(購読・未来)、十谷あとり(日月・玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、山田航、棉くみこ

有田さんより出された今回の兼題は「乗り物」。以下、(1)どのような乗り物が(2)どのように詠み込まれたのか という点に着目して、8人の参加者のそれぞれ工夫を見てみたい。

1)どのような乗り物を選んだのか

まず、兼題に提出された15首すべての歌から、乗り物あるいは乗り物を連想させる言葉をピックアップしてみよう。

テイルランプ 自転車 カブ 猫車 ワイパー 船、免許証、車用信号、四駆、銀翼、バルーン、ちん電、路面電車、準急、チャリ

ごらんの通り、直球というよりは変化球できた人が多かった。乗り物そのものというよりも、乗り物に付随しているものや固有名詞、短縮形など、題へのアプローチの仕方に工夫がみられた。一方で少ないながらも「自転車」「船」等の直球を選んだ人もいて、歌そのもので勝負することの大切さを感じることもできた。
また、ジェットコースターやゴーカートのような遊戯の乗り物は登場せず、もし小中学生などがこの題で歌を詠んだとしたら、さらにバリエーションが増えたのではないだろうかなどと考えをめぐらせた。

2)どのように詠み込まれたのか

 それでは各詠草を取り上げながら、どのように乗り物が登場しているのかを(1)の内容を踏まえて見ていきたい。

○恋愛のシーン

 駅、空港、さらには5回点滅するブレーキランプなど、交通機関や乗り物を恋愛の舞台として登場させているドラマやポップスをよく見聞きする。「移動する」という乗り物本来の目的が「別れ」を表現するのに合っているからなのだろう。では、短歌はどうなのか。今回提出された詠草のなかにも恋愛をイメージさせる歌があったが、直接別れを詠ったものはなかった。ステレオタイプになるのを避けた結果かもしれない。

 君を背にカブで汀へ青春といふ悪酔ひを醒めてたまるか   山田航

 ワイパーをそがれゆく雨キャンセルをした約束がゴトリゴトリと  棉くみこ

 悲しみでみたされているバルーンを ごめん、あなたの空に置いたの 笹井宏之

 一首目。「青春」を「悪酔い」としたところが絶妙との意見あり。「カブ」という素材選びに対しても好意的な意見が多かった。「カブ」によって、青春の場面がよりリアルに描かれている。
 二首目。約束した相手が恋人とは限らないと思うが、憂鬱な恋愛の一場面を連想させる歌である。約束という抽象的なものを物体であるように「ゴトリゴトリ」と表現したのが素晴らしいとの意見があった。一方で、「ワイパーにそがれゆく雨」の表現に対して適切かどうかの疑問も出た。
 三首目。「ごめん、あなたの」に切なさを感じる一首。「あなた」は置かれていることを喜んでいるのではないかという捉え方も出された。題は「乗り物」であるので、「バルーン」は気球を意味するのではないかとの読みがあった。「あなた」そのものが作中主体の乗り物だと捉えると、ちょっとSweetになりすぎるか。

○日常の風景

 交通社会という言葉があるように、現代では交通手段としての乗り物が生活に欠かせないものとなっている。とはいえ乗り物自体は昔からあり、舟、籠、馬車、汽車、飛行機など時代に応じて発達してきた。乗り物はその時代時代をあらわすキーワードなのかもしれない。

 霜枯のとなり町まで自転車で村上春樹句集を買いに  蔦きうい

 北風を裂く銀翼の音がいま数秒遅れでわたしに届く   雨宮司

 みんな誰かにかかりあふひと準急の窓に付箋を貼るごとき雨  十谷あとり

一首目。「自転車と句集の取り合わせが漫画チックでおもしろい」「春樹と句集が似合わないのにしっくりくるのは角川春樹のせいである」「『霜枯』『春樹』の対比が効いている」という様々なコメントが付いた。いろいろな視点で読むことができる一首である。
 二首目。飛行機であろうか。「北風」「銀翼」の言葉から、透き通った空気感がよく伝わってくる。旅客機が飛ぶような時代だからこそ詠める歌である。古典、近代とは違った現代独特の感覚ではないか。
 三首目は今回の最多得票を得た一首。まず「準急」がリアルで絶妙であるという意見が多数あった。また「付箋を貼るごとき雨」の比喩にも好意的なコメントが寄せられた。心象~実景への移し方も巧く、準急のやるせなさがよくあらわれている。

○成長の過程

 「何の乗り物を運転できるようになるか」という変化は、すなわち人間の成長そのものではないだろうか。三輪車が自転車に、自転車が自動車に、やがては免許証を返上してシルバーパスをもらう。小学校では自転車教室が、教習所では「交通社会の一員として」とお説教をされる。そのような成長をテーマにした歌があった。

 七歳までおねしょしていた弟が四駆のステアリングを握る   有田里絵

 免許証は大人のあかし車用信号の赤で止まるうれしさ  天昵 聰

 一首目。ベタな感じがするとの意見がある一方で、「四駆」はあこがれの象徴で、成長の具合がいきいきと描かれているという好意的な意見も。ステアリングを握るというところにF1やラリーにも通じるワクワク感がある。
 二首目。共感を得た人が多数いる一方で、「大人のあかし」と言い切れるかどうかという意見もあった。

 今回は、題の幅の広さが作者の工夫の余地を広げ、読みごたえのある力作がそろっていたように思う。最後に自由詠の高得点歌を二首あげておく。

 冬、小雨 ビルの無認可保育園そとをみているそとをみている  有田里絵

 ひきがねをひけば小さな花束が飛びだすような明日をください  笹井宏之

(天昵 聰 記)

# by kaban-west | 2008-02-05 20:47 | 歌会報告
2008年 01月 05日

12月歌会報告

◆◆かばん関西歌会◆◆

二〇〇七年十二月二十三日(日) 於 大阪市立難波市民学習センター第一会議室

【オンライン参加者】天昵聰・雨宮司・有田里絵・石川游・大橋謙次(ゲスト)・大澤美枝子・笹井宏之(購読・未来)・塩谷風月・十谷あとり(日月・玲瓏)・関川洋平・蔦きうい(玲瓏)・文屋亮(玲瓏)・山下りん(ゲスト)・山田航・棉くみこ

【当日参加者】雨宮司・有田里絵・塩谷風月・十谷あとり・棉くみこ

 今回はイブイブ当日の開催ということもあってか、新趣向がいくつか見られた。
①兼題は公募制。「星」「聖」「箱」「鏡」が提案され、どれか一つ以上を詠みこめばいいことになった。むろん、全てを一首に詠みこんでも構わない。
②作品評を、開催日よりも前にネット上で発表した。参加者は手の内を既に他者に見せたうえで会場に臨むことになる。より深い読みが成立するか否かが当日の鍵となる。

 今月は兼題三首以内、自由詠二首以内の提出である。各々十四名参加、提出は兼題が三十六首、自由詠が二十六首という盛況ぶりだった。選歌は先月に引き続き五首選である。

◆兼題「星」「聖」「箱」「鏡」

 これだけ兼題が多く、しかも詠み手が大人数だと、いろんな思惑が絡んでくるようだ。一首の中に何としてでも兼題をすべて放りこんでみようとする者と、一首に無理なく兼題を入れていこうとする者に大別された。

〔一種類を詠みこむ〕

ひとしきり戸惑う顔も見たことだし目を逸らさせてあげる「あっ星」  山田航

牧童とキスするゆうべ水星の沈むあたりに神の鼾が  蔦きうい

うつむいてあなたが星になるまでを冬のシンクにしたたるひかり  笹井宏之

もみの木の一番上から見下ろした星の視線に酔いしれる雪  大橋謙次

冬の街に太陽の尾を追いかけて聖者とバンで走れるのみだ  棉くみこ

ヤドリギの向かうの坂をハロゲン光降り来て聖夜夫が帰る  文屋亮

針箱にいろいろごちゃごちゃある中に並べたボビン美しきかな  大澤美枝子

星座図で鼻をかんだら全天に両手かかげて十【とお】の星差せ  関川洋平

聖堂の楷の紅葉【あかば】のひとひらは合格一人の身代わりに散る  天昵聰

微笑めば微笑む泣けば泣き顔に合わせ鏡の君等を包み  山下りん

オリオンの星のかたちをたどれる子ミトンの中の人差し指に  十谷あとり

 一首目。選を入れた男性4名はどうやら作者を女性と考えていた様だが、選ばなかった女性陣は作者を男性と考えていたらしい。いったいどこからこの齟齬が生じたのかという点に議論
が絞りこまれ、「~だし」「~させてあげる」等の言葉遣いに起因するのではないかということで落ち着いた。
 二首目。牧童に人気が集中。ハイジのペーターを連想する者、井辻朱美氏のハイファンタジーと共通する世界観を感じてしびれる者、ひたすら思考をまとめようと必死になる者など、各人各様の反応がみられるユニークな状況となった。
 三首目。笹井調は今回も健在。「うつむいて」から「したたるひかり」を涙と捉える者、「星」から距離・時間の果てしなさを連想する者など、多様な読みが提示された。最後の「ひかり」に関しては、会場で「あえて『したたるひかり』と詠むことで、読みを限定させないようにしている」との意見も出された。今月の最高得点歌である。
 四首目。雪が星の視線に酔いしれるというのがなかなかない視点だという者、アンデルセンの『絵のない絵本』を連想する者など、好意的な評が出る一方、作り物の星の視線に酔ってしまうとは、広く遠くを見渡している星なら視線が合わないのでは、など、疑問を投げかける意見もあり、見解が割れた。
 五首目。バンという選択が突然の逃避行を連想させる、聖者とバンで走るところが現代的な感覚である、バンという選択がいい、という評が多くを占める中、全体を口語調に統一しても良かったのでは、という意見もあった。オフ会では「太陽の尾」という表現が何を指すのか、また「聖者」が何を指すのかに意見が集中した。「太陽の尾」は傾いてどこからか差しこむ陽射しを、「聖者」は時候がらサンタの扮装を連想させる、という指摘がなされた。
 六首目。なぜヤドリギが出てくるのか、という疑問が出されたが、西洋のクリスマスの習慣にある、という指摘に一同納得。下句を詰めこんだ感じがする、「ハロゲン光」は自動車を連想させる、「ハロゲン光」はヤドリギと異質なようだがキャンプで使うと雰囲気があるのでいいと思えるようになった、だんなさま帰宅の景が神々しさをもって歌われている、などの評が寄せられた。
 七首目。日常の些細な部分に美を見出す視点がいい、「いろいろごちゃごちゃ」から整然と並ぶボビンへ焦点が定まる感じがいい、口語の軽い感じから「美しきかな」へ移る際の温度差がいい、意外性に詩を感じる、等の評があった。
 八首目。奇想にあてられる人が続出。星座図で鼻をかむという飛躍はいかにも「かばん」らしい、上二句でぶっとんだ、という評が出される一方、「星差す」ではなく「星指す」ではないかとの指摘もなされた。
 九首目。聖堂や楷が学問向上・合格祈願の喩としてうまく機能している一方、結句がおおげさではないか、「紅葉」は素直に「こうよう」と読ませた方がいい、など、細かい指摘も目立った。
 十首目。「合わせ鏡の」と続けて読むか、「合わせ/鏡の」と切って読むかで意見が分かれた。「合わせ鏡」なら三面鏡などに囲まれているイメージ。「合わせ/鏡の」なら、表情に注目してほしいという作者のメッセージが立ってくる。また、「君等」が子どもたちなのか鏡に映った一人の人物を指すのか、という問いかけもあった。
 十一首目。ミトンに人気が集中。星座を正確にたどれるかどうかはともかく、様子が目に見えてきそうだという好意的な評が目立った。三首目と並び、今月の最高得点歌となった。

〔複数個を詠みこむ〕

戦争に聖なるものはあらずして地球といふ星いまだ火燃ゆ  石川游

聖夜には一番星が映るらし鏡張りなる真鍮の箱  有田里絵

銅鏡の裏に聖なる星刻み杉の香満ちる箱へとしまう  雨宮司

 一首目。結句は定型に落ち着かせることができそう、字足らずに効果を感じない、と主に技術面に対する辛口の批評が目立った。内容そのものに関しては、詠いつくされたようにも思えるがそれでも詠っていかねばならない、聖戦や正義をいくら主張しようとも民間人を巻きこむことに変わりはない、など、肯定的な意見が目立った。
 二首目。「星が映る」と言い切ってもいいのでは、とりあえず四つのお題を全て入れてみたという感じを受ける、との評がある一方、題を全て読み込んでいるのに静謐で自然な感じがする、との肯定的な意見もあった。
 三首目。星を刻んでいるのは死期を予知した卑弥呼では、「杉の香満ちる」が全体に現実味をあたえている、との意見があった。一方、全部のことばがきれいなものづくしで同じ力加減になってはいないかという辛口の評もあった。

※全体にバランスを欠いた歌会記になってしまっているようです。実際にはもっと多様な複数個題詠があったことを明記しておきます。

◆自由詠

 二首に絞りこんだことで、秀歌が目立ちました。おまけに五首選にしたことで激戦の様相を呈しています。特に選の多かった作品三首を記すことで、評に代えたいと思います。

トラックは橋を渡りぬ横風に幌の肋をあらはにしつつ  十谷あとり

飛行形静かに保ち白鳥ら見えぬ航路を今渡り行く  文屋亮

放課後の窓の茜の中にいてとろいめらいとまどろむきみは  山田航

                      (雨宮司)

# by kaban-west | 2008-01-05 09:34 | 歌会報告